【第11回】スプラの話

 世の中には様々な手段で自分の「ナワバリ」を主張する人間がいる。スプレーで公共物に落書きする奴、満員電車の中で新聞を広げる奴、自分の机にある書類の山を隣の人の机にまで広げる奴、トイレでウンコをした後に流さないでそのままにする奴……あまり面白い例が思い浮かばなかったのでこれぐらいにしておくが、まあ色々と迷惑な人間がいたりするものだ。

 実は最近、僕も「ナワバリ」を競い合うことに目覚めた。夜になると僕は街に出掛けてインクを塗り散らかすのだ。といっても、もちろんこれはリアルの話ではない。ゲームの中の話である。今回の記事ではそのゲームの話を書こうと思う。

 

 去年の7月21日、「スプラトゥーン2」というゲームが発売された。このゲームは名前の通り「スプラトゥーン」の続編である。「スプラトゥーン」はWii U向けのタイトルとして発売され、「スプラトゥーン2」はNintendo Switch向けのタイトルとして発売された。

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 このゲームに登場するメインキャラクターはインクリング(通称:イカ)という生き物だ。インクリングは、「ヒト」の姿と「イカ」の姿を自由に使い分けることができる生き物で、強いナワバリ意識を持っているという特徴がある。だから、インクリングたちの間では、毎日のように「ナワバリバトル」と呼ばれる争いが繰り広げているらしい(調べたらそのような設定があった)。任天堂インクリングのことを「イカしたイカ」だと説明している。駄洒落である。昔、任天堂は「メトロイド オモロイド」なんていう激寒なCMをやっていたらしいから、その頃から駄洒落が好きだったのだろう。

 

 そんなイカした奴らが出てくるゲーム、僕はずっと遊んでみたかったのであるが、Nintendo Switchが品薄で全然手に入らなかったので遊べなかった。けれども、去年のクリスマスにようやく入手することができた。クリスマスの日の朝、目が覚めると、何とベッドの枕元にNintendo Switchが置かれていた。サンタが来たのか? いや、違う。クリスマスイブの夜、僕はその日買ったNintendo Switchを自分のベッドの枕元にこっそり置いておいたのだ。それが朝起きると、そのまま同じところに置かれていた。その日は寝相が良かった。

 

 僕は会社から帰って気分転換をしたい時や会社が休みの日に「スプラトゥーン2」で遊んでいる。ただ、気分転換と言いつつ深夜1時までプレイしていることもある。次の日の出社は地獄だ。最近、僕はゲームで遊ぶ機会がほとんどなくなっていたのだが、このゲームは本当に面白いと思ったのでけっこうな頻度で遊んでいる。

 「スプラトゥーン」はネット対戦がメインとなっているゲームである。世界のどこか(とはいうもののほとんど日本)に住んでいる見知らぬ誰かと対戦をするのだ。もちろん、友達とネットを介して遊ぶこともできる。しかし、僕は友達が少ないので基本的には見知らぬ誰かと対戦をしている。ネット対戦をやっている時、僕はたまに画面の向こう側にいる相手のことを考えることがある。「今こうして自分と対戦をしている相手も今日は会社で働いてきたのだろうか?」というようなことを考えるのだ。そして、そう考えながらコントローラーのスティックを動かして相手に照準を合わせる。撃つ。そこに慈悲はない。

 

 社会人というのは僕が思っていたよりも厳しいものであった。平日は毎日が厳しいので現実逃避したくなる時もやっぱりある。そんな時にゲームは役立つ。僕にとってゲームとは、現実逃避できる場所を作ってくれる存在である。まあ、逃避ばかりしていてもダメだと思うが、ゲームに限らず何か逃避先を作ることは大切なことだと思う。僕はこれからも適度に現実から逃避して、うまく生きていこうと思う。