【第6回】人生を変えた本の話(その1)

 みなさんは自分の人生を変えた本に出会ったことがあるだろうか?

 僕も他人から「あなたの人生を変えた本があるか?」と訊かれたことがある。そういう時、僕は星新一の作品を挙げるようにしている。

 日本はあまり宗教というものに馴染みがない。戦後にアメリカが日本を統治しやすくするために計画的に無宗教にしたのだとかいう話や、日本人の思想の根底には儒教が強く影響しているので日本人は全員儒教徒だとかいう話があったりするけれど、「何か知らんけど日本って無宗教じゃない?」という認識が一般的であると思う。それでいて、企業が儲けるためにハロウィンやクリスマスやイースター(←NEW)を祝う文化を定着させたりするものだから、最近の日本文化には闇鍋のようなサムシングを感じる。ただ、日本には漢字を中国からパクってきて独自の文化に昇華させたという歴史もあるので、日本は昔からそのような能力に長けていたのかもしれない。

 いきなり話が脱線してしまった。まあ何が言いたいかというと、日本は無宗教であるがために、聖書やコーランといった自分の思想の指針となる本を生まれながらにして与えられない。なので、日本人は聖書の代わりになる本を自分で探して見つけるか、他人に教えてもらう必要があるということである。

 星新一の作品は、自分の思想の指針となっている。カッコ良く言えば、星新一の作品は僕のバイブルだということになる。だから、他人から「あなたの人生を変えた本があるか?」と訊かれた時に、僕は星新一の作品を挙げるようにしているのだ。

 

 でも、ちょっと待てよ…と先週の僕は思った。確かに、星新一の作品は僕のバイブルなのであるが、自分の人生に何らかの影響を直接与えた訳ではないという気がしてきたのだ。そういう意味では、星新一の作品は僕のバイブルであって「人生を変えた本」ではないということだ。そこで、もう一度自分の人生を思い返してみると、とても意外な本が自分の人生を変えた本であることが分かった。

 

それは「物理のエッセンス 力学・波動」である。

 

何で「人生を変えた本」が物理の参考書なのかという疑問をぶつけられそうであるが、続きの話(その2)はまた来年に書こうと思う。